にかちゃんだよ〜とは言えない【番外編】 (ページ4)

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SN緑③ ページ4

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「え？今家にいんの？阿部くん。」

「そうなんだよ！……にぃにと舘様もいるんだけどさ。」

のっぴきならない用事……友人とのお食事会中の私。ちなみにここはよく利用する個室居酒屋。以前この友人と飲んでいたとき、舘様とこーじくんに遭遇した店だ。

声が大きくならないよう細心の注意を払いながら実名で話している。

さて、なぜ私があとから取ってつけた用事を作ったのか。それはもうとある感情を少しでも抑える為にほかならない。

「自分が上げたわけじゃないけど家に気になる人いんのやば。」

「でしょ？それで他にも人がいるとはいえそこで一緒にワイワイするってなったら……あー無理。」

「仕事で二人きりになることあるよね？」

「それは仕事だから割り切れるんだよ。でもプライベートはなんかね……。」

いつからだろう。私が阿部ちゃんにそういう好きという気持ちを持ってしまったのは。あざとかわいいなって思ったりはしてた。それはもちろんかわいいものを愛でる気持ちからくるもので。

「でもなんかよかった。恋とかどうでもいい！って言ってたから。」

「推しって訳じゃないのが厄介なんだよ。これまじで一回異動したいって言うべきか……？」

「いつか仕事って割り切れなくなりそうってこと？」

「うん。前回の異動から考えたらちょうどいい周期だと思うし。」

付き合うなんてありえないから物理的な距離が離れないと、仕事にまで悪影響を与えてしまう未来しか見えない。前からなんとなく考えていたけどそろそろかな。

「やっぱAもプロよね。さすがお兄さんの妹！って感じ。……でも、いつか叶うような恋してほしいよ。」

「……もうちょっと仕事頑張ってたら見つかるって信じとくわ。」

のっぴきならない用事って体だから、居酒屋のくせに一口もお酒は飲まずにただ友人に人生相談というか恋愛相談したりされたり爆食いしたり。

その後あえてボウリングを2ゲームやって帰りを遅くした。

ギリギリ交通手段がある時間内で帰宅して二人はもういない、もしくは帰るところに現れる、という作戦だ。

「ただいま戻りましたー……。」

玄関のドアを開けると、この家では見覚えのない靴が2足。思わず声が消えていく。そしてドアを開ける音や声で気付いた人物が玄関にやってきた。

「おかえりなさい、Aちゃん。」

……できれば会いたくなかった阿部ちゃんだった。