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you side
あれから阿部さんは毎日訪れた。
なんの仕事をしているのかは教えてくれそうにない。
何か危ない仕事でもしているのだろうか。
「Aさん。こんばんは。
今日は晴れてて月が出てるよ。」
今日は夜遅くの面談だった。
今の時代にはコロナという怖いウイルスが蔓延していたらしいが、
二年かかって終息したらしい。
私は何年の記憶がなく、何年までの記憶があるのだろうか。
月、、今日は満月だろうか。
最期に見たのはいつだっただろうか。
誰と見に行ったのだろうか。
「あ、阿部さん。こんばんは。
月ですか?私星とか月とか大好きです。」
『……そうなんだ。じゃあカーテン開けるね』
阿部さんはまたさみしそうな表情を見せた。
時折見せるその表情は、どんな意味があるのだろうか。
それにしても、東京なのに夜遅いからなのか、星がキラキラと輝いている。
「きれぃ〜…」
『ね。綺麗だね。
あ、オリオン座…東京じゃ明るすぎてあまり見かけないんだよ。Aさんラッキー。』
オリオン座、、
オリオン座ってなんだっけ、?
星座なのはわかる。がしかし、どんな星座か、どんな成り立ちなのか…
思い出せない、
思い出そうとすると、頭が痛くなってしまう。
「ど、どれがオリオン座ですか、?」
『……これだよ。』
聞くと阿部さんは、私の後ろに回って、星座を指さした。
阿部さんの息と、温かさが、どこか懐かしいようで同時に恥ずかしかった。
「ち、ちかぃ、です……」
『あ…ごめん…』
阿部さんはバツが悪そうに、後ずさりをした。
ああ、またその顔…
申し訳なさそうに、どこかさみしそうに…
「帰るね」と言って、病室の扉に手をかけた。
彼にお礼を言うと、やはりさみしそうな顔をしていた。
「…阿部、亮平……、?」
なんか聞いたことがあるけど、やっぱり思い出せない。
時間が解決してくれるのだろうかなんて浅はかなことを考えるが、なかなか時間が解決してくれることがなく、2週間3週間、毎日阿部さんが来てくれたのに思い出せない。
そればっかりか、記憶をなくしてからの思い出だけが溜まっていく。
思い出に残るように写真に残しておこうか。
という阿部さんの提案に乗って、1枚1枚増えていく。
ただ、彼との関係の名前が気になって仕方がない。
『阿部さん……本当に私たちって仲がいい友達だったんでしょうか…、?』
とうとう聞いてしまった
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作者名:蒼空 | 作成日時:2024年3月25日 21時