置いてきた恋心 - masakado ページ15
( 正門良規side )
anan授賞式ステージ。
『メンバーの正門が
シックスパックにして特集に
呼んでもらえるように、と言っていたので
私も鍛えて正門の特集をやる時は
相手に呼んでもらえるように頑張ろうと思います』
半分くらい冗談やろな、と思う声色で
りりから発せられた言葉に
ステージの上で一瞬だけ動揺した。
メンバーが彼女の言葉に絡みに行くのを聞きながら、
その動揺を誰にも悟られまいと笑みを作る。
もう意識しないようにしたはずの気持ちが
一瞬、ざらりと心臓を撫でたような、
痛みと言えるほどかもわからん感情を思い出した。
いい思い出、
とは言い難い。
というか、言えん。
そんな出来事だった。
彼女の唇の感触は
あの頃は呼ばれていた下の名前と
目いっぱいに溜まった涙が落ちていくのと
リンクしとるから。
触れたかったよりも、
触れてしまったという感覚のほーが大きかった。
ステージから捌けると、
ポニーテールにした黒髪が揺れるりりへと
声をかけた。
正門「しろ」
『お疲れ様』
正門「お疲れさん。おめでとー」
『正門もおめでとう』
並んで歩きながら笑うりりの
頭を片手で撫でる。
『何さ』
正門「鍛えんなら付き合うわ」
『じゃあシックスパック目指して頑張ろーかな』
正門「一緒に出たら、
またちゃんと俺に照れてな?」
『ねぇ! あれは違うじゃん!』
福本「まっさんが、にゃんちゃん怒らしてるー」
正門「ごめんごめん」
あの頃よりお互い大人になった。
グループが決まった時に置いてきた感情が
彼女に触れるとぶりかえす気がして
撫でていた手を離す。
後ろから話しかけてくる
大晴とこじけんに目をやりながら、
最後にもう一度りりの唇に
視線を向けると「よしくん」と唇が動く。
正門「ん?」
『どうかした?』
周囲のざわざわに埋もれてしまいそうな
小さな声で問いかけられて、
ただ1人、りりには
動揺がバレていたのだと悟って気まずくなった。
正門「どうもしとらんよ」
『……そっか』
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時